2021-03-28

労働相談にあたって実名を尋ねる理由は

社会保険労務士が行う労働相談に限らず、弁護士の先生が行う法律相談では、相談者のお名前やご住所等の個人情報をお聞きするのが通常です。

その理由は、「利益相反」を防ぐためです。

たとえば、事業主と従業員との間で労働トラブルが起きているケースで、その解決のために、その事業主と従業員さんが同じ社労士に相談したとしたらどうなるでしょうか。

この場合、この社労士のさじ加減で事業主と従業員さんのどちらにも有利なように導くことができますし、社労士が専門家という立場を利用し自分の利益を優先して、法的に適正でない結論に強引に持っていくことさえできてしまいます。

このように、利害が対立する当事者の双方から相談を受けることは利益相反行為となって信義則にも反するおそれがありますし、当事者の双方の代理人となる行為は、民法108条で禁止されています(双方代理の禁止)。これらのケースについては、社会保険労務士法においても「業務を行い得ない事件」として社労士が受任することが禁じられています。

ですので、労働相談にあたっては、社労士は相談者のお名前等をお聞きして、将来においてその相談者と利害が対立する当事者から相談を受けたり、仕事の依頼を受けたりすることを防ぐ必要があるのです。

ちなみに、ある弁護士の先生は、「弁護士と比べ、社会保険労務士は利益相反に対する認識が甘い」とおっしゃっていました(汗)